海へ行った。私はまだ人間だ。

今日は海へ行った。特に理由はないのだけど、うつ状態になり家にいても頭痛やら全身の重さが取れないので気晴らしにどこかに行こうと思ったからだ。移動手段は自転車だ。

最初は隣町の公園にでも行こうかと思ったが、外出したときはすでに夕方になっていたので帰りの時間を考えると遅くなると思ったし、結構遠いのでそこよりは近い海に行くことにした。

ただ海にいるだけなのも手持ち無沙汰なので海の手前のコンビニでカフェオレを買った。

ギーコーギーコ―と錆びたチェーンが音を軋ませる。

海に着くとすでに水平線の上に夕日が登っていた。

それは綺麗な景色だった。

でも私はどこか無感情に近い状態だった。うつだからだろうか。

質感（クオリア）を感じきれていないような、カラーの風景を見ているはずなのにどこかセピア色に感じてしまう自分の心に若干の不快感を覚えた。

でもよく水平線を眺めてみると、どこか心がワクワクするような気持ちになった。

あの水平線の向こう側には何があるのだろうと考える少年のような心。

私の方へ寄ってくる小さい波。そして引き返す。それを数度繰り返したあと、今度は大きな波となって向かってくる。

迫りくる波をじっと見つめる。

ほんの少しの恐怖。迫力に気圧される。

良かった。こうした些細な現象に私の心はまだ少しは動かされるのだ。

私はまだ無感情なロボット人間になったわけじゃない。

痛みや苦しみ、悲しみだけを感じる肉の塊になってはいない。

喜び、感動、そういうものをもっと全力で感じたい！

……中学生のとき、離人症になった。あのときには戻りたくない。

海は寒かったが、少しだけ気持ちを落ち着かせることができた。

また行きたいと思う。